2019年08月04日

なつぞらは攻めている

以前からちょいちょい書いていますが、朝ドラ「なつぞら」を視聴しています。

前もちょこっと書きましたが、物語の吸引力としては少し弱い。でも、予想をちょいちょい裏切ってきて、不可思議な魅力があると。

私はそれは、脚本家さんが意図的になさっていることではないかと思うようになりました。

たとえば物語を盛り上げるための要素なら、素人の私にだって思いつきますし、ドラマ慣れした視聴者は、ある程度それを期待し、予想して見ています。
それをあえて避けている? というか、そこに大きく依存させずに話を進めているのではないかと。

上手くいえないのですけど、私はそのあたりの予測不可能性が面白くて、ついつい毎回見てしまいます。
そういった予定調和的なテンプレをあえて避けての上での冒険? かもしれないと思うと、失敗の許されない100作目で、すごいな、と思ってしまうわけです。

特にすごいと思うのが、ヒロインの造形です。
というのも、このなつぞら、要とも言えるヒロインの好感度を、あまり重視していないんじゃないかと思うんです。
素人の私でもそうですが、ヒロインを造形する時、まず好感度が持たれる造形になるよう心がけます。
もちろん人殺しを平気でするとか、なんの理由もなしに悪事を働くとか、親不孝をするとか、友達をさげすむとか、そんな基本中の基本の人間性で、好感度を貶めるようなことはしませんし、もちろんなつぞらもしていません。

私の場合TLですから、その舞台や読者層に見合った好感度を考えるわけですけども、朝ドラにも朝ドラに見合った好感度ってものがあると思うんです。
朝ドラは、私が思うに結構な保守層が見ているドラマではないかと思います。
そこで求められるのは、中高年以降の心に否応なしに深く根付いている良妻賢母的な……いわゆる昭和の家庭像、母親像ではないかと思うのです。
なつぞらは、それをあっさり斬り捨ててきた。

まず、ヒロインのなつは、ちっとも可愛くないのです。
広瀬すずさんが演じておられるので、容姿は超絶可愛いですけど、性格は全然可愛くない。
というより、超絶可憐な広瀬すずさんが演じていることで、キャラの毒性が緩和されているといっても過言ではないかと。
割と空気を読まない反応をする。ちょいちょい余計なことを言う(好感度的に)。
鈍い(好感度的に)。
恋愛に疎く、男性に全く依存しない、むしろ冷めている。
派手な服を着る。(この設定は、本当にすごいと思います。なにしろ広瀬すずさんは、清楚な服装な方が美しいからです。私は彼女が派手な服を着続けることが、現代の女性へのメッセージだと思っているのですが、当然、批判の声が大きいです)
苦労しない。(作中で殆ど触れられていないという意味で。しかしそれも、あざといお涙ちょうだいの展開を避けた脚本家の意図的な企みではないかと思えています)

あの広瀬すずさんを起用して、ここまで好感度を意識しないキャラに徹したのかという衝撃。
彼女は、結婚することが決まった同僚に婚約破棄を告げられても、目は潤んでいましたが毅然とそれに対応し、涙ひとつ溢さず「さよなら」と告げて席を立ちます。
この潔さ、男かと思いました。
そもそもプロポーズされたときも、数秒驚いただけで「はい、結婚します」というあっさりぶり。
むしろ、相手の男性の方が、女性のように戸惑っておりました。

そして極めつけは、結婚することを昔お世話になった人に告げにいったシーン。
「この人が、私の夫になる人です」
うわっ、なんて攻めてるんだ、とびっくりしました。
ここは……保守層が多くみている朝ドラでは……「私、この人の妻になります」でしょうよ。
私の夫、どこまでも自分主体。どこまでも対等。朝ドラで。
すげーな、と。

実は私、このドラマのネタバレを最終回までチェックしているのですが、これからどんどん攻めてきます。
絶対にすずがネットで批判される展開だけど、本当にここまでやるんだ、と。

その攻めの姿勢を徹底するために、安易な物語性を排除したのだとしたら、それはすごい冒険だな、と思っちゃったわけです。
ただ、「攻め」の姿勢と書きましたが、それは世界的には攻めでもなんでもない。
女性が男性と対等に働く。子供がいても対等に働く。当たり前の展開です。
先日、クリミナルマインドのシーズン10をようやく見たのですが、あの少ないメンバーで、しかも過酷な業務内容で、女性の1人が子持ち、1人が子持ち&妊婦という設定。男性も1人がシングルファザーです。
それが別になんのこともない普通の出来事として周囲に受け入れられています。

日本の朝ドラという舞台で、これまで保守向けだったものから舵を切ろうとしている。(多分半分青いもそうだったんじゃないかと思いますが、その後のまんぶくがもろ昭和の良妻賢母路線だったので)その姿勢がすごいなと思うのです。
願わくば、それがもう当たり前のスタンダードになって、その分物語をさらに面白く、充実させてくれたら言うことはありません。

というわけで、来週以降のなつぞらが楽しみです!












posted by 石田累 at 17:38| 日記

2019年07月06日

検診の日

今日は半年に一度の定期検診の日。
右の胸にしこりが見つかってから、もう2年かな。
なんだろう、有名な方がたてつづけに同病になり、色々なものを読んじゃったせいか、検査していくら大丈夫と言われても不安がとれず。
一時、お風呂に入るのも嫌になり(シャワーのみ)、検診やドックが近づくたびに不安になって不眠が続くという、ちょっと考えすぎた人みたいな状態が続いてました。
ちなみに私、不安になると、思考を停止させるために、ひたすら何かを見るんです。
ドラマとか、映画とか、小説とか、漫画とか。
そして寝る。

ここ1年くらい、それに加えての不眠と、ようやく眠れても5時台に目が覚めるみたいな状況が続いて。
まぁ、生きることへの色んな不安や、仕事が変わったことへのストレスだろうなとは思うんですけど。
昔なら不眠上等で、目が覚めている限り小説を書いたりしてたんですけど、今はひたすら「催眠ミュージック」みたいなの流して目をつむっているだけ。
私、今日一日何したっけ。
……仕事して帰って、ご飯作って、あれこれ片付けて、動画配信見て、寝る。
その延々たる繰り返し。

でも今日を契機に、思考停止な日々は、いい加減やめようと思いました。

この年になると、いつ、何が見つかるかなんて、神様の領域。

と、思い続けられるほど強い人間じゃないですけど、最後まで、何かを生み出せる私でいたい。
まだまだ書きたい話は、沢山あるので。……

さて、今日はちょっと嬉しいことがありました。
「愛に堕ちた軍神」のAmazonのレビューで、「何故かゲースロが再生される」ってコメントがあったんです。
そうなんです。私も脳内で再生させながら書いたんです。サントラかけながら書いたんです。イラストの衣装なんかもこの雰囲気でってお願いしたんです。
その世界観を目指したなんて、まったくできてないんで口が裂けても言えませんけど、それでもちょっとはイメージしてたんです。
表紙が出来たとき、タイトルの感じがほんのちょっと雰囲気が似てて(あくまで私の脳内で)、めっちゃ嬉しかったんです。決してそうしてくれとお願いしたわけじゃないんですけど。
私の周囲にはゲースロ好きな人がいないので、ぜひお話したい(>_<)……と、思いました。




posted by 石田累 at 17:10| Comment(0) | 日記

愛に堕ちた軍神・裏話

藤井7段、勝ちましたね。
と言っても、興味ない方にはなんの話題かも判らないかもですが。
とにかく息詰まる終盤……ハラハラドキドキして、夕食後くらいからずっと目が離せなかったです。
勝って欲しい。そして次の豊島戦でまた夢を見せて欲しい。
祈るような気持ちで見てました。
若き天才棋士、藤井聡太さんの試合は、今、私の一番の楽しみです。

さて、愛に堕ちた軍神、電子書籍の発売が開始されました。
それでというわけじゃないですけど、最近、ちょこちょこ読んでいるレビューなどを見て、思い出したことがあるので少しだけ。

以下、けっこうネタバレしてますので、未読の方は読まれてからお読みください。





この物語のラストですが、正直、賛否あるだろうなとは思ってました。
読後感が変わってはいけないので詳細は書かないですが、このラスト、実は3通りありました。
まずは初稿段階、この時、すでに締め切りから1年くらい遅れてて(もう遅れてるって域を超えてますが)、ひとまずイラスト指定のためだけに書けている部分を送ることとなりました。その時点で最終章からエピローグが全く書けていなかったので、その部分はプロット形式で送りました。
担当さんから電話がありました。
ちなみにその頃の私は、体力気力ともにすっかり消耗していて、もう逃げたい、なんとか終わらせて楽になりたいという、やや後ろ向きな心持ちだとお察しください。
「……石田さん、このラストなんですが、いくらなんでもヒロインが可哀想じゃないですかね」
「そうですかね? そんなでもないと思いますけど」(こんな複雑な話をまとめるだけでも大変だったのに、もうこれ以上頭が回らないという逆ギレた気持ち)
「いや、これじゃあちょっと……。最初にいただいたプロットもこんなでしたっけ」
「そこまで詳しくプロットには書いてなかったと思いますけど」
「ヒーローに、別の奥さんがいるって、ちょっと……」
「いや、それはフェイクであって、本当にいるわけじゃないんですよ。その前に髪色がそっくりの人物を出しましたよね? それが伏線で、法王宮を脱出したアディスが、身分を捨ててその立場に収まるというエンディングです」(この設定は、設定ごと後に削りました)
「……うーん。判るんですが、どうでしょう。ここまで辛いことが続くんだから、最後は大団円にしましょうよ。ページ数の問題もありますし」
この時点で、書けていないにも関わらず、ページ数が大幅にオーバーすることは確定でした。
こんなに迷惑をかけているのに、なかなか首を縦に振れなかった私……。
しかし担当さんは辛抱強くお話してくださって、最後は私も、まぁ、そう言われればそうかもしれない。これは私の趣味で書いてる話とは違うんだ、と思いました。
「わかりました。やってみます」

そして2回目、とりあえず全部書けたものを送りました。
ページ数はリミットから20〜30ページくらいオーバーしてましたし、このままではまずいことも判っていたのですが、とりあえず送りました。ただしラストは、これでいいと思ってました。
担当さんから電話がありました。
「石田さん、このラストですけど、ちょっとヒロインが悩みすぎじゃないですすかね」
「えっ、(私なりの)大団円にしましたよね?」
「大団円かなぁ。……最後のエピローグで、ヒロインがヒーローの元に戻るかどうか葛藤していますよね。その葛藤、いらないと思います。ここで、そんなことで悩む? と思いますし。そこでまたひとつの山ができるじゃないですか。エピローグに、もう葛藤はいらないでいいんじゃないですか」
「………」
ちなみに、ヒロインがヒーローの元に戻るかどうかで悩むというのは、最終稿でも同じですが、実はこの段階では悩む問題が違ってました。書きませんけど。
「最後は、思いっきり明るく幸せに、でいいと思います。そうしましょうよ」
おおおお……となにか口から巨大なため息が出ていくような気持ちでしたが、あれこれ話を続けている内に、確かに言われるような書き方にできるかもしれないと思うようになりました。
それに、この問題でヒロインが悩むのはおかしいというのも、尤もなご指摘でした。
「わかりました、やってみます」

そして3回目。
担当さんから電話がありました。
「石田さん、ラストですけど、前よりひどいことになってませんか??」
「……そう、かもしれないですね。とりようによっては」
「いや、大団円でいこうって言いましたよね。これはちょっとひっかかります」
「○○さん、私も頑張ったんです。キャッキャッうふふなパターンを考えて、実際書いてみようと思いました。でも、無理だったんです。ページ数的に」
「ページ数的に?」
「エピローグが後日談だけだったら、イチャコララストにできたかもしれません。しかしあのエピローグにはページ数の都合上、どうしても種明かしをいれないわけにいはいかないじゃないですか。そこに触れるとき、彼らの痛みと悲しみを描かないわけにはいかない。となると、明るく始まって、悲しくなって、また明るくなって終わるのが理想ですが、その感情の流れを丁寧に追っていくには、見ての通り、ページに余裕がありません」
なにもかも自分の構成力のせいなのに、尤もらしく力説する私……
しかし実際、各章、マジで1,2行くらいしか余裕がなかったのです。もう削りようがないくらい削りまくった後だったので、担当さんも、その窮状は判っておられました。
というより、種明かしをエピローグに入れざるを得なかった時点で、明るいばっかりで終わらせるのはちょっと無理な話でした。
「明るく始まって暗く終わるか。暗く始まって明るく終わるか。その二択だったら暗く始まって明るく終わるのがいいですよね。となると、エピローグの前半、やはりヒロインはなにかしらの葛藤を抱えているべきなんですよ。それが晴れてエンドとなる。その感情の流れでネタ証しをやるのが一番コンパクトに書けます」
「……判りました。でもせめて、もうちょっと盛り上げるとか……」
「そう思って花火を打ち上げてます」
「ああ、確かに。石田さんなりに盛り上げてくれたんですね」(苦笑)

その後、いくつか読後感をよくするためのアドバイスをいただきましたが、基本的にはその最終案で通りました。
双方妥協したような、してないような。
多分、ページ数度外視で描かせてもらっていたなら、全く別のラストになってたと思います。
でも、選んだのはこのラスト。

校正の時に読み返して、自分が思っていたより読後感はいいと思いました。
これがアディスとラウル一代の話ではなく、過去の悲劇から続く物語だからです。
それごとひっくるめて様々な困難が完全解決したと思ったら、けっこういい終わり方じゃないですかと。
と担当さんに話したら、私もそう思いますと言われて、ほっとしました。

ま、でも、さまざまな受け止め方があって然るべきだと思います。
私たち2人でも、色んな意見を交わし合いましたし……
ご意見、お待ちしています・笑



posted by 石田累 at 03:19| Comment(0) | 日記