【ストーリー】小さな町を通りかかった引っ越し途中のカップルを、地元の凶暴な強盗団が襲撃する。拉致監禁し、脅し、痛めつけ、金品を奪う。それはいつも通りの簡単なヤマのはずだった・・・。
だが奪った車のトランクには、もう一人の少女が囚われていた。全米を震撼させている14人の学生が惨殺された事件で、その現場から連れ去られたと思われていたエマ・ウォード。
高額の賞金が懸けられたエマの発見に喜ぶ強盗団。だが彼らはわかっていなかった。自分達が相手にしているのが、一体何者なのかを。(Amazonより)
悪党対悪党もの
昨日観たばかりなので、忘れない内に連投。
実は私、悪党対悪党というパターンが結構好きで、海外ドラマ「ハンニバル」でハンニバルが同じくシリアルキラーと肉弾戦を繰り広げる回や、アニメ「ブラッド+」で敵方の翼手同士が対決するシーンとか、もう大好物なんですけど……
そんなものを期待して、配信を待ちきれずにDVDを購入してしまったこの一作。
面白いことは面白いのですが、個人的には若干期待外れでした。
最後まで息もつかさずに一気見させられるレベルには面白かったのですけど、もう少し敵が手強くてもよかったんじゃないかと……
もしくは、捕らえられていた少女が主役顔負けのシリアルキラーの素質を持っていたとか。
そういう、最強の怪物同士の対決を最後まで期待したのですけど、それが私的にはいまいち……消化不良のまま終わってしまいました。
ただ、主役のイケメンぶりが半端なくて、このキャラでこの哀愁漂うイケメンって、結構すごい組み合わせだなと思いました・笑
ホラー映画としては普通に面白くて(実は観るまでジャンルがホラーとは思わなかったのですが)、最低人間をそれよりさらに突き抜けた最低人間が懲らしめるという爽快感もあったりして、続編があったら必ず見るだろうなとは思います・笑
2020年02月09日
ノー・ワン・リヴズ【米(北村龍平/2012)】
posted by 石田累 at 15:25| Comment(0)
| 映画・ドラマ感想
里見八犬伝【深作欣二(1983/日本)】
【ストーリー】
悪霊につかえ、不死身の妖怪となった玉梓は、かつて里見家に征伐された恨みを抱いて館山城に攻め入った。
里見一族は虐殺され、静姫だけが生きのびる。
その姫の前に仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の各字を刻んだ八つの霊玉を持った八剣士が集まる。
妖怪軍団の巣窟へ攻め入り、激闘の中で一人一人命を失ってゆく八剣士の中、親兵衛と静姫は最後の力で玉梓に挑むのであった。(Amazonより)
※以下、ネタバレあります。
私的大傑作映画
中学校の時に映画館に5回くらい通い詰めた映画です。
その年のお年玉をはたいてビデオも購入。
購入特典としてもらったポスターを何年も部屋に貼り続けていました。
折に触れて再見し、今回も久々に見ました。素晴らしかった。
この作品は、私を創作に駆り立ててくれたまさにきっかけとなるもので、今の私の方向性の殆ど全てなんじゃないかとさえ思います。
この映画と山田風太郎の「おんな牢秘抄」。
どっちを先に見たのか記憶が定かじゃないんですけど、ほぼ同時期に夢中になったこの2作品がその後の私の人生を決定づけたといっても過言ではありません。
さてそんな同作ですが、実は大学生の頃、一番好きな映画として同作の名をあげると、友人や先輩らから大抵微妙な反応が返ってきました。
微妙なのはまだましな方で、中には露骨に鼻で嗤われたことも。
ものすごく好きだったので、当時言われたことは殆ど覚えてるんですけど・笑
真田広之が薬師丸ひろ子に比べて格が落ちすぎるだの、ラブシーンだけは日本映画にしては綺麗だったねだの。
なんていうのか、基本「大した映画じゃない」という評価ばっかりでした。
そうだろうか。
私は私の審美眼に絶対の自信があったのですが、自分の尊敬する先輩や仲間達にこうも否定されると、
まぁ、私の方向性が人と違うということなのか。いずれにせよ、これはあまり人前でどや顔で語る作品じゃないんだな。
と、情けないことに、そう思うようになってきました。
ただ確かに、当時の日本映画や外国映画、またはアニメ作品などのことを思うと、仲間達が「馬鹿にした」理由も判るような気がするのです。
当時は従来の日本映画が衰退し、代わりに出てきた角川映画が人気を集め始め、アニメなんかでもものすごい革新的な作品が続々出てきていた頃でしたから…。
当時の仲間達は、皆素人とはいえクリエイティブな人たちばかりで、映画やアニメ等の過去作品に造詣が深く、ゆえに角川映画は評価するに値しないアイドル映画みたいなくくりでしかなかったのかもしれません。
が、今、改めて長い目で日本映画の隆盛を見た時、やはり私には・笑
私にはがつきますけど、この「里見八犬伝」はやっぱり傑作じゃねぇか、という気がしてなりません!
その理由を今から書きます。
1 これだけの映画を今後日本で作れるのか?
もちろん同作品が、技術的に、海外作品に比べると見劣りすることは言うまでもありません。
セット感溢れる場面といい、おもちゃみたいな蛇といい・・
が、その後、映像技術は間違いなく進歩したはずなのに、私にはこの作品以上の実写伝奇物を日本映画で見たことがありません。(もちろん全部見たわけではなく、すっかり日本映画を観なくなった近年のものは正直カウントされてないんですけど)
映像的には何倍も優れた作品はあると思いますけど、ストーリーや迫力や訴えてくるものが里見八犬伝には到底及ばないと思うのです。
てか、予算的に、さらにはキャスト的に、さらにいえば時代劇制作事情的に、里見八犬伝レベルの作品を今後日本で作るのは、もう不可能なのかなとすら思います。
2 こんな俳優が今後日本に現れるのか?
薬師丸ひろ子という、神秘性を兼ね備えた国民的アイドルであり、スター。
まさに現代のお姫様のような存在。
真田広之という稀代のイケメン、野性味溢れる美貌に加え、凄まじいアクションがこなせるスター。
里見八犬伝は、この奇跡的な二人のスターの組み合わせがあってこそ成立し得た作品であると思います。
時々、今の俳優で里見八犬伝をリメイクしたら…と、夢のようなことを考えるのですが、途中で妄想は止まってしまいます。
二人に代わる俳優がいない。
特に真田広之に代わる俳優がいない、というか、今の芸能界の中から出てくるとも思えない。
女なら一度はこんな状況に陥ってみたいと思わせるシチュエーションラブ
では具体的に里見八犬伝の何が私の心をこうも揺さぶるのか、書きます。
一言で言えばタイトル通りです!・笑
親の仇をとるために、八犬士を探しながら旅を続ける静姫は、報償目当ての野武士親兵衛に掠われます。
野武士といってもまだ子供みたいにやんちゃなところのある親兵衛。
やっていることは卑怯なんだけど、なんだか抜けていて憎めないキャラです。
静姫もまだ大人にはなりきれていない、ちょっと我が儘なお姫様気質が抜けてない感じ。
その人間としては不完全な二人が、旅(親兵衛が静姫を敵に引き渡すための旅)の中で遭遇する事件で心を通わせるようになり、知らず引かれ合うようになります。
しかしそれを確認しあう前に、八犬士が静姫を取り戻しに来て、親兵衛は静姫の懇願で命だけは助けられるのですが、追いやられてしまいます。
その後、実は親兵衛が敵方・玉梓の血を引いていることなどが判明し、一度は敵方に取り込まれそうになりつつも、なんとか救出され、そこで改めて八犬士の一人であることが分かります。
再会と同時に仲間であることが分かった静姫と親兵衛は結ばれるのですが、ここが本当に美しい。
初めて見た時は、恋愛を描くことの美しさに心底痺れまくりました。
結構長いラブシーンで、セックスを最後までしたことが朝チュンでなく、脳内補完しなくても分かる流れになってます。なのに薬師丸ひろ子さんは、ほぼ顔しか見せていないという……全くお見事な落としどころ!
当時のトップアイドル二人があそこまでよくやったなと、今見返してもしみじみと思います。
が、幸福な朝を迎えたのも束の間、静姫は敵に掠わます。
そして、八犬士が静姫を取り戻すために敵城に潜入することに…。
このあたり、いや、最初から最後まで、実はストーリーとしては突っ込みどころ満載なんですけど、そんなことどうでもいいと思えるくらい、なんだか妙な迫力で押し流されてしまいます。
これは多分深作欣二監督の手腕なのではないかと思うんですけど、冷静に考察すると、?が百くらい並ぶんですけど、要所要所のシーンが印象的すぎて、欠点が全部うやむやになっているとでもいいますか。
てか、映画なんて、キャラやストーリーの整合性がどうとかより、生涯忘れられない印象に残るシーンをひとつでも作れればそれで大成功なんじゃないの?
と、これもまた、私が自身の座右の銘にしていることでもあるのですが、それを学ばせてくれたのもこの映画なのです。
もちろんそこが矛盾だらけなら、そもそも見ている人が映画の中に入っていけないという欠点はあると思うんですけど、里見八犬伝…というか、深作欣二監督は、それでもぐわーっと引きずり込んじゃうと言う、一種豪腕な才能の持ち主ではないだろうかと。
だから、見た後に冷静になって「ここはおかしい」と思っても後の祭りなんですね・笑
本題に戻ります。
ここからですね。ここからが、中学生の私が、当時、それをどう表現していいか分からないまでも・笑、悶え狂った名シーンです。
静姫が捕らえられている敵のアジト(天守閣?)に辿りつく前に、次々と悲壮な死を遂げていく八犬士。
一人一人のシーンはえっ?と言うほど短いのですが、そのどれもが非常に印象的に仕上がって、かつスピード感があるので、ジョン・オバニオンの勇壮な劇伴に乗って、ああああという間に、主要人物たちが死んでいきます。
ここから敵の城が焼け落ちるまでの流れは、何度見ても見飽きることのないほどに素晴らしく、特に犬塚信乃が妹浜路と再会するシーンは、劇伴含めて本当に美しい。
短い時間に死亡する6人分の人間ドラマ(要脳内補完)をこれでもかとばかりに詰め込んで、いよいよ静姫の元にたどり着いたのは、千葉真一演じる犬塚壮介と親兵衛の2人だけ。
ここで早々に千葉真一が亡くなり(彼らしい最期です)、ついに残るは親兵衛たった一人になります。
敵は無数の武装騎士、さらには殺しても死なない妖怪玉梓とその息子。
しかも静姫が人質に取られていて絶対絶命。
この時の静姫の気持ち!
どうなんでしょうか? 自分を助けるために、その前夜結ばれたばかりの美しい男が、決死の覚悟で飛び込んできて、まさに死に物狂いで戦っているわけですよ!(興奮)
なんていうの? 嬉しいと言う言葉では語り尽くせない、むしろ恍惚とした誇らしさ?
ていうか、この場面での真田広之さんの美しさときたら、もう尋常じゃないんですよ。
こんなシーン、彼以外にできる俳優がいる? 多分いないっすよ。世界中どこを探しても。
だからこのシーンを脳内で再現したくて、私はいつも小説を書いてるんです。
話をレビューに戻しますけど、もちろん恍惚たる顔を薬師丸さんはしませんよ・笑
でも縛られたまま、一人戦う親兵衛を見つめることしかできない時、もうこの男のためなら死んでもいいとさえ思えるほどの愛と性的興奮を覚えたりはしなかったのだろうか……と、これは随分後年になってから思いましたね。ええ、思いました・笑
もし今、当時に戻れるなら、その夜の二人……みたいな二次創作書いてたかもですね。
あ、でも原作小説が脳内妄想を補ってあまりある描写だったので、それで満足したような・笑
ラストシーンは、別れから一転してのハッピーエンドで、これは原作小説とは違います。
現実味がないっちゃあないですけど、そもそも馬で手繋ぐ?っていう・笑。
でもこの爽やかな、かつ青春の結晶のような美しいエンディングが、この映画を「本当に見て良かった」「本当にいい映画だった」としみじみと思わせてくれるのです。
また、来年辺り、もう1回観ようと思います。
悪霊につかえ、不死身の妖怪となった玉梓は、かつて里見家に征伐された恨みを抱いて館山城に攻め入った。
里見一族は虐殺され、静姫だけが生きのびる。
その姫の前に仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の各字を刻んだ八つの霊玉を持った八剣士が集まる。
妖怪軍団の巣窟へ攻め入り、激闘の中で一人一人命を失ってゆく八剣士の中、親兵衛と静姫は最後の力で玉梓に挑むのであった。(Amazonより)
※以下、ネタバレあります。
私的大傑作映画
中学校の時に映画館に5回くらい通い詰めた映画です。
その年のお年玉をはたいてビデオも購入。
購入特典としてもらったポスターを何年も部屋に貼り続けていました。
折に触れて再見し、今回も久々に見ました。素晴らしかった。
この作品は、私を創作に駆り立ててくれたまさにきっかけとなるもので、今の私の方向性の殆ど全てなんじゃないかとさえ思います。
この映画と山田風太郎の「おんな牢秘抄」。
どっちを先に見たのか記憶が定かじゃないんですけど、ほぼ同時期に夢中になったこの2作品がその後の私の人生を決定づけたといっても過言ではありません。
さてそんな同作ですが、実は大学生の頃、一番好きな映画として同作の名をあげると、友人や先輩らから大抵微妙な反応が返ってきました。
微妙なのはまだましな方で、中には露骨に鼻で嗤われたことも。
ものすごく好きだったので、当時言われたことは殆ど覚えてるんですけど・笑
真田広之が薬師丸ひろ子に比べて格が落ちすぎるだの、ラブシーンだけは日本映画にしては綺麗だったねだの。
なんていうのか、基本「大した映画じゃない」という評価ばっかりでした。
そうだろうか。
私は私の審美眼に絶対の自信があったのですが、自分の尊敬する先輩や仲間達にこうも否定されると、
まぁ、私の方向性が人と違うということなのか。いずれにせよ、これはあまり人前でどや顔で語る作品じゃないんだな。
と、情けないことに、そう思うようになってきました。
ただ確かに、当時の日本映画や外国映画、またはアニメ作品などのことを思うと、仲間達が「馬鹿にした」理由も判るような気がするのです。
当時は従来の日本映画が衰退し、代わりに出てきた角川映画が人気を集め始め、アニメなんかでもものすごい革新的な作品が続々出てきていた頃でしたから…。
当時の仲間達は、皆素人とはいえクリエイティブな人たちばかりで、映画やアニメ等の過去作品に造詣が深く、ゆえに角川映画は評価するに値しないアイドル映画みたいなくくりでしかなかったのかもしれません。
が、今、改めて長い目で日本映画の隆盛を見た時、やはり私には・笑
私にはがつきますけど、この「里見八犬伝」はやっぱり傑作じゃねぇか、という気がしてなりません!
その理由を今から書きます。
1 これだけの映画を今後日本で作れるのか?
もちろん同作品が、技術的に、海外作品に比べると見劣りすることは言うまでもありません。
セット感溢れる場面といい、おもちゃみたいな蛇といい・・
が、その後、映像技術は間違いなく進歩したはずなのに、私にはこの作品以上の実写伝奇物を日本映画で見たことがありません。(もちろん全部見たわけではなく、すっかり日本映画を観なくなった近年のものは正直カウントされてないんですけど)
映像的には何倍も優れた作品はあると思いますけど、ストーリーや迫力や訴えてくるものが里見八犬伝には到底及ばないと思うのです。
てか、予算的に、さらにはキャスト的に、さらにいえば時代劇制作事情的に、里見八犬伝レベルの作品を今後日本で作るのは、もう不可能なのかなとすら思います。
2 こんな俳優が今後日本に現れるのか?
薬師丸ひろ子という、神秘性を兼ね備えた国民的アイドルであり、スター。
まさに現代のお姫様のような存在。
真田広之という稀代のイケメン、野性味溢れる美貌に加え、凄まじいアクションがこなせるスター。
里見八犬伝は、この奇跡的な二人のスターの組み合わせがあってこそ成立し得た作品であると思います。
時々、今の俳優で里見八犬伝をリメイクしたら…と、夢のようなことを考えるのですが、途中で妄想は止まってしまいます。
二人に代わる俳優がいない。
特に真田広之に代わる俳優がいない、というか、今の芸能界の中から出てくるとも思えない。
女なら一度はこんな状況に陥ってみたいと思わせるシチュエーションラブ
では具体的に里見八犬伝の何が私の心をこうも揺さぶるのか、書きます。
一言で言えばタイトル通りです!・笑
親の仇をとるために、八犬士を探しながら旅を続ける静姫は、報償目当ての野武士親兵衛に掠われます。
野武士といってもまだ子供みたいにやんちゃなところのある親兵衛。
やっていることは卑怯なんだけど、なんだか抜けていて憎めないキャラです。
静姫もまだ大人にはなりきれていない、ちょっと我が儘なお姫様気質が抜けてない感じ。
その人間としては不完全な二人が、旅(親兵衛が静姫を敵に引き渡すための旅)の中で遭遇する事件で心を通わせるようになり、知らず引かれ合うようになります。
しかしそれを確認しあう前に、八犬士が静姫を取り戻しに来て、親兵衛は静姫の懇願で命だけは助けられるのですが、追いやられてしまいます。
その後、実は親兵衛が敵方・玉梓の血を引いていることなどが判明し、一度は敵方に取り込まれそうになりつつも、なんとか救出され、そこで改めて八犬士の一人であることが分かります。
再会と同時に仲間であることが分かった静姫と親兵衛は結ばれるのですが、ここが本当に美しい。
初めて見た時は、恋愛を描くことの美しさに心底痺れまくりました。
結構長いラブシーンで、セックスを最後までしたことが朝チュンでなく、脳内補完しなくても分かる流れになってます。なのに薬師丸ひろ子さんは、ほぼ顔しか見せていないという……全くお見事な落としどころ!
当時のトップアイドル二人があそこまでよくやったなと、今見返してもしみじみと思います。
が、幸福な朝を迎えたのも束の間、静姫は敵に掠わます。
そして、八犬士が静姫を取り戻すために敵城に潜入することに…。
このあたり、いや、最初から最後まで、実はストーリーとしては突っ込みどころ満載なんですけど、そんなことどうでもいいと思えるくらい、なんだか妙な迫力で押し流されてしまいます。
これは多分深作欣二監督の手腕なのではないかと思うんですけど、冷静に考察すると、?が百くらい並ぶんですけど、要所要所のシーンが印象的すぎて、欠点が全部うやむやになっているとでもいいますか。
てか、映画なんて、キャラやストーリーの整合性がどうとかより、生涯忘れられない印象に残るシーンをひとつでも作れればそれで大成功なんじゃないの?
と、これもまた、私が自身の座右の銘にしていることでもあるのですが、それを学ばせてくれたのもこの映画なのです。
もちろんそこが矛盾だらけなら、そもそも見ている人が映画の中に入っていけないという欠点はあると思うんですけど、里見八犬伝…というか、深作欣二監督は、それでもぐわーっと引きずり込んじゃうと言う、一種豪腕な才能の持ち主ではないだろうかと。
だから、見た後に冷静になって「ここはおかしい」と思っても後の祭りなんですね・笑
本題に戻ります。
ここからですね。ここからが、中学生の私が、当時、それをどう表現していいか分からないまでも・笑、悶え狂った名シーンです。
静姫が捕らえられている敵のアジト(天守閣?)に辿りつく前に、次々と悲壮な死を遂げていく八犬士。
一人一人のシーンはえっ?と言うほど短いのですが、そのどれもが非常に印象的に仕上がって、かつスピード感があるので、ジョン・オバニオンの勇壮な劇伴に乗って、ああああという間に、主要人物たちが死んでいきます。
ここから敵の城が焼け落ちるまでの流れは、何度見ても見飽きることのないほどに素晴らしく、特に犬塚信乃が妹浜路と再会するシーンは、劇伴含めて本当に美しい。
短い時間に死亡する6人分の人間ドラマ(要脳内補完)をこれでもかとばかりに詰め込んで、いよいよ静姫の元にたどり着いたのは、千葉真一演じる犬塚壮介と親兵衛の2人だけ。
ここで早々に千葉真一が亡くなり(彼らしい最期です)、ついに残るは親兵衛たった一人になります。
敵は無数の武装騎士、さらには殺しても死なない妖怪玉梓とその息子。
しかも静姫が人質に取られていて絶対絶命。
この時の静姫の気持ち!
どうなんでしょうか? 自分を助けるために、その前夜結ばれたばかりの美しい男が、決死の覚悟で飛び込んできて、まさに死に物狂いで戦っているわけですよ!(興奮)
なんていうの? 嬉しいと言う言葉では語り尽くせない、むしろ恍惚とした誇らしさ?
ていうか、この場面での真田広之さんの美しさときたら、もう尋常じゃないんですよ。
こんなシーン、彼以外にできる俳優がいる? 多分いないっすよ。世界中どこを探しても。
だからこのシーンを脳内で再現したくて、私はいつも小説を書いてるんです。
話をレビューに戻しますけど、もちろん恍惚たる顔を薬師丸さんはしませんよ・笑
でも縛られたまま、一人戦う親兵衛を見つめることしかできない時、もうこの男のためなら死んでもいいとさえ思えるほどの愛と性的興奮を覚えたりはしなかったのだろうか……と、これは随分後年になってから思いましたね。ええ、思いました・笑
もし今、当時に戻れるなら、その夜の二人……みたいな二次創作書いてたかもですね。
あ、でも原作小説が脳内妄想を補ってあまりある描写だったので、それで満足したような・笑
ラストシーンは、別れから一転してのハッピーエンドで、これは原作小説とは違います。
現実味がないっちゃあないですけど、そもそも馬で手繋ぐ?っていう・笑。
でもこの爽やかな、かつ青春の結晶のような美しいエンディングが、この映画を「本当に見て良かった」「本当にいい映画だった」としみじみと思わせてくれるのです。
また、来年辺り、もう1回観ようと思います。
posted by 石田累 at 15:06| Comment(0)
| 映画・ドラマ感想
2020年01月02日
この世界のいくつもの片隅で【片淵須直(2019/日本)】
【ストーリー】有名なので省略
前作が詩なら今作は物語
今更ですが、私にとって観る価値のある(面白いと思う)映画とは、自分の創作意欲をかきたてるか否か、その一点に尽きます。
なので、世間的な評価が高くても(そういうものは大抵面白いんですけど)、自分的には全く見る価値がなかったり、逆に世間では駄作と評されても、複数回観た挙げ句DVDを買っちゃうほど夢中になることがあります。
その作品が自分の中で消費し尽くされるまで、言い換えれば飽きるまで延々と観るわけですが、最近ではチャウ・シンチーの映画がそうでした。
ちなみに楽曲なんかもそうで、一度ひとつの曲で小説のイメージがわくと、二度とその曲を聴きたくなくなるまで、延ッ々とそればっかり聴いています。なので家人には「何故、いつも同じ曲が部屋から聞こえるの?」と不審がられる始末です。
話を映画に戻しますと、中には、さほど創作意欲に刺激を与えてくれなくても、単純にその面白さやカタルシスから、つい繰り返し観てしまう作品があります。「シンゴジラ」なんかがそうでした。そして「この世界の片隅に」もそういった作品のひとつです。
この作品は、映画公開年に、配信分も含めて十回くらいは観ました。
あまりに好きすぎて、その世界観の再現がしたくて、「愛に堕ちた軍神」のモチーフにしたくらいです。「え? どこが」と思われるでしょうが、ヒロインが異国みたいな世界に一人で嫁いで、愛情のないままに初夜を迎えるというシチュエーションに少しだけ萌えました。結果、そんな感じで夫婦になったとしても、肉体を交わらせている間に他人行儀だった関係性が少しずつ変わっていく、という過程にも萌えました。
ただし「萌え」たのはそのくらいで、この映画の魅力というか、魂を激しく揺さぶられる部分は、全く別のところにあります。
私は映画を観て漫画を読んだ口ですが、正直、「えっ、おとぎ話ラブロマンスだと思ってたのに、そうじゃなかったんだ……」とややショックを受けたのを覚えています。
しかもタッチはほのぼのしてるのに、案外性愛描写が生々しいな、と。
今回の長尺番は、そこをがっつり入れてきた(しかも、原作より分かりやすくなっている)わけですが、前評判どおり、2018年公開の前作とは全く別物になっていると感じました。
前作が詩的で、正直、あまり物語感がなかったのに対して、今回は「ああ、物語だな」という感じです。
これを観て、逆に前作をあんな風にまとめたことに、むしろ深い衝撃を覚えました。
ベースになった作品を、一種別の「作品」として昇華させたことの方が、むしろ凄かったんじゃないかなと。
二時間半があっという間
今回、長尺版と言われているように、上映時間は非常に長いです。
観る前は、正直、「うわ、ちょっときついな」と思いました。
もう私の中では、原作漫画を含めて消費し尽くされている作品ですから、今更観ても何も感じないかもしれないなとも思いました。
でも、ほんっと不思議なことに、見始めると終わりまであっという間なんですよね。
何故だろう。私は長い映画が比較的苦手で、結構寝ちゃうんですけど、え、もう終わりなの、まだ観ていたい……と最後はやっぱり思えてしまう。
ちなみに年末、SWEP9を観ましたけど、本当……誘ってくれた人には申し訳ないけど、苦痛で……寝ないことに注力するのに必死でした。ちなみにEP7も8も観ましたけど、どっちも同じ感じでしたね。
根本的に私には合わないんだと思います。これを語ると、面白くない理由の分析だけでいくらでも書けるんですけど、時間の無駄なのでやめておきます。
補足として付け加えれば、実は今回の映画も同じ相手と観に行きました。
始まってほどなくするとその人は眠りに落ち、映画館を出た後、面白くなかった理由を延々聞かされました。聴く価値もなければ反論する労力ももったいないので、適当に聞き流していましたが、映画のよしあしって、人それぞれなんだと思います。(ここまで読み返して、なんでこんな奴と映画に行くんだろうと思われるのもあれなので書きますけど、配偶者です)
お薦めではあるけどその理由を語れない
これは、前述しましたが、私の創作意欲に何かを与えるような作品ではないからです。
そういうレベルじゃないというか、もう、……遙か上の次元の作品とでも言いますか……。
ただただ胸がえぐられて、手放しで泣くことしかできない――なのに生きる力を与えてくれる作品です。
前作が詩なら今作は物語
今更ですが、私にとって観る価値のある(面白いと思う)映画とは、自分の創作意欲をかきたてるか否か、その一点に尽きます。
なので、世間的な評価が高くても(そういうものは大抵面白いんですけど)、自分的には全く見る価値がなかったり、逆に世間では駄作と評されても、複数回観た挙げ句DVDを買っちゃうほど夢中になることがあります。
その作品が自分の中で消費し尽くされるまで、言い換えれば飽きるまで延々と観るわけですが、最近ではチャウ・シンチーの映画がそうでした。
ちなみに楽曲なんかもそうで、一度ひとつの曲で小説のイメージがわくと、二度とその曲を聴きたくなくなるまで、延ッ々とそればっかり聴いています。なので家人には「何故、いつも同じ曲が部屋から聞こえるの?」と不審がられる始末です。
話を映画に戻しますと、中には、さほど創作意欲に刺激を与えてくれなくても、単純にその面白さやカタルシスから、つい繰り返し観てしまう作品があります。「シンゴジラ」なんかがそうでした。そして「この世界の片隅に」もそういった作品のひとつです。
この作品は、映画公開年に、配信分も含めて十回くらいは観ました。
あまりに好きすぎて、その世界観の再現がしたくて、「愛に堕ちた軍神」のモチーフにしたくらいです。「え? どこが」と思われるでしょうが、ヒロインが異国みたいな世界に一人で嫁いで、愛情のないままに初夜を迎えるというシチュエーションに少しだけ萌えました。結果、そんな感じで夫婦になったとしても、肉体を交わらせている間に他人行儀だった関係性が少しずつ変わっていく、という過程にも萌えました。
ただし「萌え」たのはそのくらいで、この映画の魅力というか、魂を激しく揺さぶられる部分は、全く別のところにあります。
私は映画を観て漫画を読んだ口ですが、正直、「えっ、おとぎ話ラブロマンスだと思ってたのに、そうじゃなかったんだ……」とややショックを受けたのを覚えています。
しかもタッチはほのぼのしてるのに、案外性愛描写が生々しいな、と。
今回の長尺番は、そこをがっつり入れてきた(しかも、原作より分かりやすくなっている)わけですが、前評判どおり、2018年公開の前作とは全く別物になっていると感じました。
前作が詩的で、正直、あまり物語感がなかったのに対して、今回は「ああ、物語だな」という感じです。
これを観て、逆に前作をあんな風にまとめたことに、むしろ深い衝撃を覚えました。
ベースになった作品を、一種別の「作品」として昇華させたことの方が、むしろ凄かったんじゃないかなと。
二時間半があっという間
今回、長尺版と言われているように、上映時間は非常に長いです。
観る前は、正直、「うわ、ちょっときついな」と思いました。
もう私の中では、原作漫画を含めて消費し尽くされている作品ですから、今更観ても何も感じないかもしれないなとも思いました。
でも、ほんっと不思議なことに、見始めると終わりまであっという間なんですよね。
何故だろう。私は長い映画が比較的苦手で、結構寝ちゃうんですけど、え、もう終わりなの、まだ観ていたい……と最後はやっぱり思えてしまう。
ちなみに年末、SWEP9を観ましたけど、本当……誘ってくれた人には申し訳ないけど、苦痛で……寝ないことに注力するのに必死でした。ちなみにEP7も8も観ましたけど、どっちも同じ感じでしたね。
根本的に私には合わないんだと思います。これを語ると、面白くない理由の分析だけでいくらでも書けるんですけど、時間の無駄なのでやめておきます。
補足として付け加えれば、実は今回の映画も同じ相手と観に行きました。
始まってほどなくするとその人は眠りに落ち、映画館を出た後、面白くなかった理由を延々聞かされました。聴く価値もなければ反論する労力ももったいないので、適当に聞き流していましたが、映画のよしあしって、人それぞれなんだと思います。(ここまで読み返して、なんでこんな奴と映画に行くんだろうと思われるのもあれなので書きますけど、配偶者です)
お薦めではあるけどその理由を語れない
これは、前述しましたが、私の創作意欲に何かを与えるような作品ではないからです。
そういうレベルじゃないというか、もう、……遙か上の次元の作品とでも言いますか……。
ただただ胸がえぐられて、手放しで泣くことしかできない――なのに生きる力を与えてくれる作品です。
posted by 石田累 at 23:15| 映画・ドラマ感想